プロファイリングとランタイム通知 ID

2008-09-17

更新 : 2007 年 11 月

ランタイム通知では、報告されたクラス、スレッド、アプリケーションドメインなどの ID が示されます。これらの ID を使用すると、共通言語ランタイム (CLR: Common Language Runtime) に詳細情報を照会できます。各 ID は、項目を説明するメモリ内のブロックのアドレスです。ただし、プロファイラでは、ID を非透過的なハンドルとして扱う必要があります。プロファイル関数の呼び出しで無効な ID が使用されると、結果は未定義になります。多くの場合は、結果としてアクセス違反が発生します。プロファイラは、使用されている ID が有効であることを確認する必要があります。プロファイル API ではどのような種類の検証も実行されません。検証を実行するとオーバーヘッドが生じ、アプリケーションの実行速度が大幅に低下するためです。

プロファイル ID の特性

以下のセクションでは、プロファイル API の ID の特性について説明します。

一意性

ProcessID は、プロセスの有効期間中、システム全体で一意です。その他のすべての ID は、ID の有効期間中、プロセス全体で一意です。

階層構造とコンテインメント

ID は、プロセスの階層構造を反映した階層構造にまとめられています。プロセスにはアプリケーションドメインが含まれています。アプリケーションドメインにはアセンブリが、アセンブリにはモジュールが含まれています。モジュールにはクラスが、クラスには関数が含まれています。スレッドはプロセス内に含まれ、アプリケーションドメイン間で移動できます。オブジェクトは多くの場合アプリケーションドメイン内に含まれています。同時に複数のアプリケーションドメインのメンバであるオブジェクトは、ごく少数です。プロセスの中にコンテキストが含まれています。

有効期間と安定性

特定のプロセス、アプリケーションドメイン、アセンブリ、スレッド、またはオブジェクトが破棄、除去、または解放されるか終了すると、それに関連付けられた ID は無効になります。特定の ID が無効になると、その ID に含まれるすべての ID も無効になります。たとえば、アプリケーションドメインがアンロードされると、AppDomainID が無効になります。アプリケーションドメイン内のアセンブリ、モジュール、クラス、および関数に対応する AssemblyID、ModuleID、ClassID、および FunctionID も同時に無効になります。

特定の ID の有効期間と安定性は次のようになります。

ProcessID: 生きている安定した状態は、ICorProfilerCallback::Initialize メソッドの呼び出しから始まり、ICorProfilerCallback::Shutdown メソッドから戻るまで続きます。
AppDomainID: 生きている安定した状態は、ICorProfilerCallback::AppDomainCreationFinished メソッドの呼び出しから始まり、ICorProfilerCallback::AppDomainShutdownStarted メソッドから戻るまで続きます。
AssemblyID、ModuleID、ClassID: 生きている安定した状態は、ID の LoadFinished メソッドの呼び出しから始まり、ID の UnloadStarted メソッドから戻るまで続きます。
FunctionID: 生きている安定した状態は、ICorProfilerCallback::JITCompilationFinished または ICorProfilerCallback::JITCachedFunctionSearchFinished メソッドの呼び出しから始まり、含まれている ClassID が破棄されるまで続きます。
ThreadID: 生きている安定した状態は、ICorProfilerCallback::ThreadCreated メソッドの呼び出しから始まり、ICorProfilerCallback::ThreadDestroyed メソッドから戻るまで続きます。
ObjectID: 生きている状態は、ICorProfilerCallback::ObjectAllocated メソッドの呼び出しから始まります。ガベージコレクションごとに変更するか死んだ状態にできます。
GCHandleID: 生きている状態は、ICorProfilerCallback2::HandleCreated メソッドの呼び出しから始まり、ICorProfilerCallback2::HandleDestroyed メソッドから戻るまで続きます。
さらに、プロファイル関数から戻される任意の ID は、戻された時点で生きています。

アプリケーションドメインのアフィニティ

ユーザーが作成した、プロセス内の各アプリケーションドメインには AppDomainID があります。既定のドメインと、ドメイン中立のアセンブリを保持するために使用される特別な擬似ドメインにも AppDomainID があります。

アセンブリ、モジュール、クラス、関数、およびガベージコレクタハンドルには、アプリケーションドメインとのアフィニティがあります。つまり、アセンブリを複数のアプリケーションドメインに読み込むと、アセンブリとそのすべてのモジュール、クラス、関数、およびガベージコレクタハンドルはアプリケーションドメインごとに異なる ID を持ち、各 ID に対する操作は関連付けられたアプリケーションドメインでのみ有効になります。ドメイン中立のアセンブリは、前に説明した特別な擬似ドメインに含まれます。

特記事項

ObjectID を除くすべての ID は、非透過値として扱う必要があります。ほとんどの ID は自己記述的です。いくつかの ID について詳しく説明します。

ClassID はクラスを表します。ジェネリッククラスの場合は、完全にインスタンス化される型を表します。List<int>、List<char>、List<object>、および List<string> には、それぞれ独自の ClassID があります。List<T> はインスタンス化されない型であり、ClassID はありません。Dictionary<string,V> は、部分的にインスタンス化される型であり、ClassID はありません。
FunctionID は関数のネイティブコードを表します。ジェネリック関数 (ジェネリッククラスの関数) の場合、複数のネイティブコードインスタンス化により、特定の関数に対して複数の FunctionID が存在する可能性があります。ネイティブコードインスタンス化は、異なる複数の型で共有できるため (たとえば、List<string> と List<object> の共有コード)、FunctionID が複数の ClassID に属する場合があります。
ObjectID はガベージコレクトされたオブジェクトを表します。ObjectID は、プロファイラが ObjectID を受け取った時点におけるオブジェクトの現在のアドレスであり、ガベージコレクションごとに変更できます。したがって、ObjectID 値は、受け取った時点から次回ガベージコレクションの開始までの間のみ有効です。CLR には、プロファイラに対する内部オブジェクトトラッキングマップの更新通知も用意されています。これによりプロファイラは、複数のガベージコレクションにわたって有効な ObjectID を維持できます。
GCHandleID は、ガベージコレクションのハンドルテーブルのエントリを表します。GCHandleID は、ObjectID とは異なり、非透過の値です。ガベージコレクションハンドルは CLR 自体によって作成される場合があります。または、GCHandle 構造体を使用して作成できます (GCHandle 構造体はハンドルのみを表すことに注意してください。ハンドルは構造体に含まれていません)。
ThreadID はマネージスレッドを表します。ホストがファイバモードでの実行をサポートする場合は、いつ実行するのかに応じて、マネージスレッドが別のオペレーティングシステムスレッドに存在してもかまいません。

メモ :

ファイバモードアプリケーションのプロファイルは、.NET Framework Version 2.0 ではサポートされていません。